話題の人物、村上世彰氏の本を読んだ。

以前話題になった、TOBや、その裏にあった出来事などが、詳細に書かれていて興味深かった。

村上さんには、私は直接お会いしたことがないけれども、知人からよくお名前を聞くことはあり、
その強烈ともとれる言動は、やはり有名だったし、そのエピソードのインパクトに驚かされることが多かったけれども、
同時にその手法にも、考え方にも、私もなるほどと学ぶことが多かったので、本はすごく楽しみに読ませていただいた。

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私は、ありがたいことに、一度自分が創業した会社を上場させ、
資本政策や株式市場において様々な経験をさせていただいたことがある。

多くの利害関係者を持ち、経営をさせていただくというのは、体で経営の激しさを学ぶこともあった。
いい時は破竹の勢いになる。でも、マイナスの余波の時は、それは私の人生を翻弄するほどで、
同時に、多くの株主の方にとってもそれは少なからず影響を与えていたと思う。

不本意にも途中でやめざるを得なかったことは、経営者として未熟だったと、いまなお反省点を思い出す。何度も何度も反芻し、いまでも夢に見ることもあるし、胸がえぐられるほどの念にかられる。

だからこそ、2回目の起業は、自分をバージョンアップさせてスタートした。

いままでにない社会性の高いサービスにしたい。
きちんと成功させ、育児環境が劇的によくしたい、出生率や女性の働き方や人生にプラスになり、
日本を変えるインフラになるほどの会社にしたいと願った。

最初は、命をお預かりする事業だから、安全性を優先し、スピードより基盤をつくることに3年かけようと思った。だから、3年は赤字覚悟で、その資金は、自己資金にした。

事業に黒字が見え、グロースに自信がもてるまでは、投資は募らないと決めていた。

その奥には、自己資金とは言ったって、創業した会社が上場したから得れたお金だという気持ちが根底にあった。新しいスタートは、1度目の会社を応援してくださった株主の方にも心が伝わるように、そんな思いもあった。

以下、本文より引用
資金は血液と同じだ。流れを滞らせたままでは、体は健康ではいられない。
血液を滞らせたる最大の原因となっている日本企業の経営陣は、自分たちの行いが子孫にどのような悪影響をおよぼすこりになるか、よくよく感がていただきたいと思う。
2060年には人口は8700万人となりその40%が高齢者だ。
(ボランティア活動をして)心に残っているのは、ゴミを拾っている時に通りかかった若者から
「おじさん、若者に一人で混じってえらいね〜」と声をかけられたことだ。
事件の心労によって髪がすっかり白くなったせいもあり、声をかけてもらった嬉しさの反面、
「もう私のことをわかる人はすくないんだな」と少し悲しい気持ちになった

この本を出すことは、これまでの強烈なバッシングによって心身ともに多くの試練に直面した家族に対する、私なりの責任の取り方であると思った。
私は、これからの日本にとって何よりも大切なことは、資金の循環だと信じている。
資金の循環は、投資を中心として起こる。
私は多くの批判を受けて来た。その原因として、自分の信念を信じ、その信念に自信をもちすぎて、早急に物事を進めすぎた場面があったことも、今になって振り返ると否定できない。しかし、私が目指して来たことは常に「コーポレート・ガバナンスの浸透と徹底」であり、それによる日本経済の継続的な発展である。
上場企業の経営者とはどうあるべきなのか、全くの正解はないかもしれないけれども、視野を広げさせてくれる興味深い本だった。

村上 世彰
文藝春秋
2017-06-21


村上世彰
文藝春秋
2017-06-21